「骸骨の記憶と実験/イツロウ」note 09/08/26up TOPに戻る
"Gaikotsu no kioku to jikken(skeleton's"memories and experiments")"
/Itsuro
(2009.8.20〜 )
このアルバムを作るにあたり、僕が目指したものは「自分自身がストレートに反映されて、
尚且つそれがエンターテイメントとして成立しているポップアルバム」でした。
そして、それは、どんな方向から来ても「これは私の音楽芸術作品です」と自信を持って答えられるもので、
どんな言い訳も許さないものにしようという事でもあります。
音楽面では、当初考えていた"全編ダンサブルな内容にしたい"というのは早い段階で脱線し、やはり本来持っている
多様な音楽嗜好性が反映されて、いままで以上のジャンク感が加味されました。
とは言え、トータル的にはポップな感覚で貫かれています。
また、歌と演奏に対してこれまで以上に(下手は下手なりに)真正面から取り組んで、様々な方法を試してみました。
とても丁寧に、且つ勢いを持ったまま、時間をかけて仕上げた、現在の私が提供し得る最上の作品として仕上げる事が出来たと思っています。
それとポイントとしては、初めて自分の作品に積極的な形でゲストが参加していることです。
軸は今まで通りの個の作品なのですが、人がそこに加わる事により、世界が押し広げられて、より開かれたモノになったように思います。
詩を含めた全体性で言うと、ここまで苦しんで作ったのは初めてでした。それは、上記の目的を完遂する為、
生まれ 持った性格・性分、私の社会的な立ち位置、などが複雑に絡み合った結果かと思います。
私・イツロウの自画像でもあり、或る人間の精神的闘いの歴史の断片。
私は、自分自身が確実に反映されたモノを作品として提示することに意味があると考えていて、本当に大衆性があるものとは、
実はそうしたモノではないかと思うのです。
誰にでも当てはまるようなことを話して共感や信頼を得るといった町の占い師的な詩の構造(それをポップとされている気がしてならないが、決してそうは思えない)や、あからさまな音楽スタイルの取捨選択は、あまりに安易なうえに、余技的なので、絶対的にやりたくないのです。
そして、それは、凄く勇気のいることなのです。これまでも同様の姿勢で作ってきましたが、
これを続けることは、体力・気力ともにとても大変なことである事を今回実感しました。
人によっては、自意識過剰な自分本位なモノで聴いてられないと思うかもしれないし、また恥ずかしく思うかもしれません。
でも、或る人は面白がるかもしれないし、また或る人にとっては救いになる可能性もあります。
大衆に向けるとは、(私にとって)そうしたものです。
同時に、大衆(=他人)に向ける事に対して責任を持っています。もし、大衆に向けない(人に向ける努力をしない)・責任を待つ覚悟がないなら、
私は誰の目(耳)にも一切触れることを拒んで、黙々と作り続けるつもりなのです。
そうして、昨年末から完成に至るまで、気の休まる日は一日もなく制作されたものが「骸骨の記憶と実験」です。
これが、どれだけの人に届くかは分からないけれど、出来る限り聴いてもらえるように努力したいと思っている次第であります。
Digest1〜6 &6〜12
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以下、制作ノート。
1)回るガイコツ
昨年末にほぼ出来ていて、アルバムを作るきっかけになった曲。完全一人制作。
ガイコツ(骸骨)とは時間軸のことで、無数に並んだ骸骨の列は円になって繋がっていて(或いは直線的に伸びていて・
・そんな事は誰にも確実には分らない)、現在という一点にのみ肉体が存在する。その一点から見ると、
その前後は白々とした骸骨か或いはゾンビのように見えるかもしれない。しかし、それぞれの時点では確かに肉体は存在し実感も
しているはずで、現在の点からそれぞれの骸骨に肉と血を付けるのは、結局のところ今ある肉体がどう感じようとするかにかかっている・・・。
というような事を、真夜中の公園で一人考えながら、詩を書いた。そこから言葉をどんどん削っているうちに音が -意外なほど明るい音が- 浮かんできて、次の日にある程度は完成していた。
言葉は、あえてシンプルで、誤解を恐れずに、少なくした。裏を読んでほしい。
そして、ここから、ある一つの作品群としての形が見えてきたのだった。
ちなみに音楽的には、明らかに80年代のプリンスの影響があるなと思ったのだが(そして今までならボツにしていたかもしれないのだが)、
詩と相まって自然と出てきてモノをわざと変えていくのは却って嘘臭い作品になると考えて、
そのまま制作を続けた。結果的に、自分で作ってきた曲の中で、最も気に入っている作品の一つになったし、
新しい方向性にもなったんじゃないかと思う。
ミックスや細かい音の付けたしと調整は何度もやった。
2)あくせく
これも早い段階で出来ていた作品。これも完全一人制作。
目に見えなく、言葉でも表現できない、"何か"を追い求めてきた。そうして焦燥感に駆られつつ、もがきながら、
現実と闘い"あくせく"と生きてきた・・・などを考えながら書いていった曲。
全体的に言えるけれど、今までより直接的に言う部分と抽象的でポエティックな部分を同居させて詩を書いている。
音楽的には、シンセをギターとして弾きまくろうということから出発した。あと、ドラムは一番好きな音色で作った。
録音中は一人なのに訳の分らないハイテンションになり、気が狂うかと思ったが、それは詩と連動したのかもしれない。
この曲は、自分を代表する作品のように思っていて、バンドのライブでは一番はまる曲かと思う。
3)マルソー
これまた完全一人制作。人生はパントマイムみたいだなと思う時があって、生きる事自体が、ありもしないものを、
さもあるかのようにして演じているだけなんじゃないかと考える時もしばしば。
それと詩中に出てくるアントニオーニ「欲望」の最後のシーンがリンクした。
これは、決してネガティブな感覚で言っている訳でもなく、単に「そういうものかもしれない」と考えた次第。
マルソーとはマルセル・マルソーのことで、パントマイムの第一人者とされるフランスのアーティスト。
幼い頃から家にマルセル・マルソーの絵本があって、パントマイムと言えば・・という感じで、自然と詩に出てきた。
ちなみに、この曲は、サポートで参加していたRoverJavaBoothのスタジオ練習中にふと思い浮かんだ曲で、
最後のパーカッション部に入っている早回しの声とジャズは、そのメンバーの運転する車中で録ったもの。
後半、裏声で呻いているかのようなコーラス?を家で録音していたら、いつの間にか玄関(鍵掛け忘れた)に人がいて、
録り終わって休憩しようと部屋から出た時にやっと気が付き、あ・・と思っていたら「大丈夫ですか?」と心配された。
声以外は外に聴こえないので、さぞかし奇妙だっただろう。
4)並行時空
バンドメンバー参加作品。先ず、枡君が叩いたドラム音源をMPCで幾つかサンプリングして、
そこから思い付いた曲と詩のイメージに沿って手でMPCを押しながらレコーダーに録音。
そこに、キーボードを弾いて重ね、ボーカルを録音してから、真太郎⇒永田君⇒達也さんと順番に録音。
各演奏のアレンジは彼らに任せた。ほかのゲスト参加曲も同様、
自分の作品に人が参加すること自体慣れていないので、いろいろと難しかった。
永田君は家で録音したのだが、演奏に対してとてもストイックで、ライブ同様にとても勉強になることが多い。
詩は、僕の性格にある両極端な指向性であったり衝動やアリス症候群的な感覚、そこから生まれた妄想の世界の実存的な意識、などが含まれている。
そして、自分の中で、異様にテンションが上がる作品なのだ。ダンサーだったら踊っているところだ。
5)或る逸話
"俺はこんなもんじゃない"の狩生健志がギターで参加してくれたポエトリーリーディング作品。
"回るガイコツ"が生まれる経緯を別ストーリーとして考えようということで、昼間の公園で連日書いた。
そしてイメージから音を作っていき、書いたストーリーを朗読して、あとはシンセ/キーボードのソロを入れようかと考えているところで行き詰まり、
どうしても想像とうまくかみ合わないな・・と悩んだ末に、狩生君のギターを思いついてオファー。
結果、個人的には、とても満足のいくモノになった。彼は、とても仕事が早く、感性にも信頼が持てるので、すごくやりやすい。
とにかく、狩生君に渡すまでの段階が異様に苦しみ、時間がかかった。全体的にそうなんだけど。
僕の内面で鳴っていた音が、かなり忠実に再現された作品。
6)なにもない
歳を重ねてきて、自分の追い求めるているものにストイックに突き進んできた結果、実際的生活圏に生きている自分には"なにもない"状態になってしまった・・・。
これは、自分が望んだ結果でもあるのだけれど、悲しいことだなとも思う。
こうした感覚を、僕は作品として昇華させる以外は何も出来ない -それ以外にポジティブにもネガティブにも変換できない- 。
ある種の障害、もしくは病気なのか。
そうした感覚を、個人的には、今までで最もストレートに表した曲で、なかなか苦しかった。
その分、かなり気に入ってる曲だし、もしこの曲が嫌いなら多分僕自身が嫌いということになるんじゃないか。
また生死感・人生観も含んでいる。
完全一人制作。
7)爆破予告
先ず、ドラムの桝君に自由に叩いてもらった約50分間の音源をもらいハードディスクに録音。そして自然に曲が浮かんでくるまで、
それを何時間かけて根気よく聴き続けた。やっとのことで浮かんできたので、使わない部分を削除し、空白を詰めて、
数十節のパーツの場所を入れ替えたり繋げたりして編集。この時点で桝君のドラミングで曲の骨格は完成。
そこに詩をつけるのだが数日間は浮かばず、苦しんだ末、或る日の真夜中に友人に話した自分の最近の精神状態を元に翌朝一気に書き上げる。
それを曲に合わせて修正し、キーボードを乗せ、歌(ラップ?)を被せる。そのデータを達也さんに送り、後日、ギターが乗って帰ってきた。
これでほぼ曲として完成。そこに真太郎のギター⇒永田君のベースを録音。各パートは"並行時空"と同じく各自にアレンジを任せる。
ミックスは何パターンも試して、やはり苦しむ。結果的に、少しミックスとマスタリングの方向性に狂いが生じてしまったものの、
この曲でしか有り得ない独特の曲に仕上がったのではないかと思う。
ライブでは、現時点でまだうまく完成できないほど難しいが、外すことのできない定番。
これは、聴けば聴くほど凄い曲だと気が付いてもらえるんじゃないかと思っており、かなり自分でも好きな曲。
8)夢な様な夢
ギャラリーを中心に活動している生能とのユニット=甲乙編での作品。自分が作詞作曲をしてトラックを作り、
そこに生能がどう絡んでくるかに焦点を置いたのだが、流石に生能は面白いアプローチをしてきた。
レコーディング時は凄く面白くて、後半に語りを入れてきたり、不安定なコーラスを被せたり、多少悪ノリが出てきたり・・と転がっていき、
ミックスではあえて彼女の声を大きめにして、その違和感を強調してみた。
中盤のメロディカソロと僕のシンセソロも良い感じで演奏できた。この時に、ソロパートを考えながら色々と弾いているうちに、
日本の伝統的な音楽とキーがほぼ一緒だと気が付いた。全く意識していなかったのだが、やはり自然とそうした感覚は身に染み付いているのかもしれない。
なので、ソロの終盤、そのメロディを弾いてます。
アルバムの中でも異色な曲で、とても楽しい曲調。
詩については、どうあがいても生きる事に苦しさを感じるので、進んでも止まっても同じこと思うのだけど、
どうせ同じだったら進んだ方がまだマシなんじゃないかという僕の考えが反映されている。
9)アルセスト
完全一人制作。僕は幼稚園の頃から今に至るまで"対社会"というテーマが目前に大きく立ちはだかっている。
そうした感覚を曲に表して、尚且つ音楽的には明るいモノにしたいと考えて作った作品。
音楽的には、かなり良質のポップンングに仕上がって、深みもある作品になった。
"アルセスト"とは17世紀フランスの劇作家・モリエールの戯曲「人間嫌い」に登場する主人公。
彼は欺瞞に満ちた俗世間を批判し、徹底して反抗しながら、最も俗世間的な女性に恋をして傷つき・・という内容。
一見、彼はとても正しいように見えるのだが、社会から見ればただの常識のない、世間知らずの男でしかなく、その構図は喜劇であり、
また悲劇でもある。これを読んで、アルセストとは少し前の自分そのものであり、いまだにその根底は変わってないんじゃないかと思った。
この曲の詩は、あれやこれや批判しつつ、とにかく自分が面白いと思う事をやれば良い、
もし他人を嘲って笑うなら先ず自分自身(私)を嘲笑した方が良い・・といったことを書いてる。
10)すきま風
一時、はぐれファンクバンド"RoverJavaBooth"に同時に参加していた本田よしこさんが参加した作品。
"風"をテーマに声のループを作ってくださいとオファーし、そのループからイメージして、その上にボーカルやノイズや演奏を乗せて作った実験的な曲。
この曲が入っている事は、僕にとって、とても重要な意味を持つ。
とても短い詩だけれど、或る瞬間の精神世界を切り取っていて、人によっていろいろと自由に読み取ることが出来ると思う。
基本の本田さんのループが凄く良い。ちなみに後半のドラムは、横須賀のリトルアムステルダムというバーで、開店
前に行って叩き、小さいハードディスクで録音したら面白いリバーブがかかっていて面白かった。
コーラスも何重に重ねて、細かい音もたくさん入れたので、何気に時間がかかっている。
11)衝動の人々
モノクローム・ビジョン・レコーディングス関連全員で一曲録ろうと思って作った曲で、唯一の純粋なヒップホップでラップの作品。どいちゃん曰く"母校"。
眼輝(たてごん)のトラックを基盤に、僕がシンセ等を加えて、
人形町のお店"om chan tone"にて、どいちゃん・senbyo(soundscapegoat)とともにラップを録音
-ここでは部屋の構造上、声が反響して、自然とリバーブがたくさんかかった- 、最後に真太郎がレコードスクラッチとギターを被せて、
更に僕が編集を加え、完成させた。
音質等の粗も含めて、良い意味でアンダーグラウンドな、とてもヒップホップ的でハードなモノになっている。
そして、"日本人によるヒップホップ"作品としてクラシックだと言い切っても良い。
ちなみに、この曲は、僕がラップで参加した狩生健志のアルバム「KK」収録作品"衝動の人"の続編という意味合いがあり、出だしも同じ言葉から始まっている。
ぜひ併せて聴いてみてほしい。
12)こども
ラストは、また完全一人制作。この中では二番目に出来た曲で、デジタルな感触。
シンセ内のシーケンサーでドラム/リズムを作り、そこにリズムを聴きながら各パートづつ最初から最後まで演奏して
録音していく、自分の基本的な曲作りパターン。ただ内容は、自分にとって新しい手法や展開で構造を作っている。
ミックスやオーヴァーダビングは何回もやっていて、これも結果的に膨大な時間をかけて完成された作品。当初は、ダンスアルバムにしようと思っていた。
自分を支配する衝動的な行動の数々、発想、思考、などなど全て自分の中に潜んでいる子供がコントロールしていて、
それは歳を重ねる毎に存在が大きくなり -実際は幼い頃のままなのだけれど、実際の年齢が増すと、同時に存在が際立ってくる- 、
それは生きるうえで重要なことだと僕自身は考えている。
僕は、命がけで遊んでいるのだ。
「骸骨の記憶と実験/イツロウ」(MVCD-005) ¥1,680(税込)
円盤shopコメント"ヒップホップというよりファンク。ソウルフルな独特の歌唱スタイルとラップを武器に、80年代のプリンスをオルタナティヴにポップに転換したような力作。'09年作12曲入り4作目。"
SUNRAIN RECORDS shopコメント
"横須賀発・現在は無力無善寺やBUSHBASH等でジャンルレスに活動しているMC/クリエイター・イツロウの4thアルバムが入荷。
プリンス、テレンス・トレント・ダービー、BECK、ムーンライダース等の影響を感じさせる、ディスコ/ファンク/ポップス/フォーク/アヴァンギャルド/そしてヒップホップ!な音はきわめてオリジナルです。狩生健志(OWKMJ
俺はこんなもんじゃない)のソロアルバムにも参加しているという彼の履歴にも納得させられますが、ルーズなのに動物的な感覚でツボをジャストで押されるこの感じは、無善寺から発信するアーティスト達に共通する、まさに「本能」ではないかと。面白い!"
mp3...
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The foreigner...please here!
Now,2songs(" Mawaru Gaikotsu(Skeleton Goes Around)"&"Heikou
jikuu(Parallel World)) are $0(mp3) at CDbaby!!!!