2020年8月、Itsuro1×2_6(イツロウ)「骸骨の饗宴」、6thソロアルバム!
デジタル配信(Spotify,iTunes store,amazon music,LINE music,apple music,etc..)、8/29リリース!
完全1人制作によるシンガーソングライターとしての7年振りの6thソロアルバム。
内省的且つ現代を反映した日本語詩とファルセットの歌を中心としたエクスペリメンタル・ポップ(彼のルーツでもあるラップの曲も一曲あり!)。
"個"の深層世界とソウル、ファンク、ヒップホップ、ジャズ、ロック、即興演奏などの"記憶"を"シュルレアリスム"的に融合させた作品。
CD ¥1,400
1) ロプロプ Loplop
2) メビウスのダンス Moebius Dance
3) ホログラム Hologram
4) 脱! Escape
5) Q Q
6) ゴルジュ Gorge
7) RCP RCP
8) 工作 Maneuvering
9) 火影 Firelight
10) 続・メビウスのダンス Moebius Dance part?
9)contains samples from "彼方" performed Yoshiko Honda(album "01")
Mastering by Nacky Ishikura(OTOlab)
Produced,composed,written,recorded,mixed and performed
by
1×2_6 itsuro
copyright 2020 monochrome vision recorings/itsuro1×2_6
個人メモ「骸骨の饗宴/イツロウ1×2_6」について
2018年に「Pro et contra」のアルバムがリリースされ、その前後からソロの曲を作ろうと思い始め、
年末までに2曲作り、さらに歌なしのトラックを幾つか作る。
あらゆる世の状況に思う所あり、詩が幾つか浮かんできていた。
2019年の3月くらいまでの間に"白" "メビウスのダンス" "ゴルジュ" "ロプロプ" "工作"という曲を仕上げる。
"メビウスのダンス"と"ゴルジュ"は、ライブでも色んなパターンで演奏し、その中でアルバムの構想が出来上がってきた。
"白"を作った時とは考えが変わり(その曲はブレイクビーツをバラでサンプルしたドラムの手打ちに、幾つかのサンプリングをコラージュしたhiphop感のあるモノ)、
"メビウスのダンス"を軸にした詩と演奏を重視する内容にしようと決め、"メビウス〜"と"ゴルジュ"は残して、
後は人と演奏しながら作り上げるモノにしようという方向になった。この頃に"脱!"のデモも録音。
しかし、月2回の自主企画イベント"木曜トポロジー!"とその他にもライブがあった為に、なかなか進行しなかった。
そんな中、新高円寺のOtolabにて、ルイス稲毛さん、石倉夏樹さん、本田ヨシ子さんと一緒に"コラプサー"という曲を録音した。
ルイスさん主導の下、それはかなり良いダンスミュージックに仕上がり、この流れで行こうとこの頃は考えていた。
とは言え、個人的な時間や環境・状況の問題もあって、なかなか進まない上に、年末にはまたもや考えが徐々に変わってきていた。
2020年になって、4月にライブを一旦全部やめて、5月から本格的に作ろうと決めた。
そこに来て、コロナ渦が始まったのだった。
4月まで続ける予定の"木曜トポロジー!"が(4月の第4木曜日で200回目だった)3月以降中止になり、ほかのライブもなくなった。
なので、予定を繰り上げ、録音を再開した。
コロナ渦は、それまで感じていた風潮を更に強め、僕は苛立っていたし、悲しくもあったし、故に強い前進の意志があった。
既に予兆がずっとあった、人々を分離し、疎外するという世界の動きに対し、
僕はあえて個の内面を深く潜る事で、他との交信をしようと思った。というか、それもずっと自身が考えていた事でもあるので、
原点であると同時に、いま作るべきものがあるとしたら、一人制作だという考えに至った。
仕事から帰ったら詩を書く/録音するという毎日。
最初はThe Topologist名義でインスト曲"Topo9" "yatta!"を作り(ただ作りたかったから)、その後、ソロアルバム用の曲に取り掛かった。
ヴォーカルは当初録音する場所がなかったので、トラックのみ8曲ほど制作。
そこから数曲ボツにしてスタジオ再開とともに"脱!" "ホログラム" "火影" "RCP" "Q"の歌を録音。
"脱!"は元々バンド録音を想定してパーカッションと歌だけのデモがあったのだが、パーカス残しで自分で演奏を重ね、詩も一部修正。
"ホログラム"は、今年亡くなった本庄克己さんの大好きなセッション音源を、本庄さんとの会話を思い出しながら何度も聴いてるうちに自然と浮かんだ曲。
"火影"は自分の中でこのアルバムを体現した曲、"Q"は昨年作ったデモからリズムだけを抜いて詩も含めて全く新しく作り直した曲、
"RCP"は勢いで作って、ちょうどミックスしている時に起きた不審なニュース(メディアはメッセージ)の音声も入れた。
"メビウスのダンス" "ゴルジュ" "ロプロプ" "工作"は、微妙に音を新しく加えた上で、ミックスを何度もやり直して仕上げた。
本当は最後に"コラプサー"を入れようと思っていたのだが、全体的なテイストが合わないと判断して外す事に。
(しかし、この曲はとても好きで、関係性の上でも意義深い曲だと思っているので、後にリリースしようと思っている。)
そんな思案をしている時期に都知事選があり、その怒りの勢いも加わりつつ、作品群の総合的な詩を一気に書いた"続・メビウスのダンス"を最後に録音、
アルバムでもラストに入れることにした。
詩は、個の内面を深く潜る事で他との交信を図る試みでもあり、このアルバムは、
それらの言葉とこれまでの様々な演奏の記憶を組み合わせたシュルレアリスム的作品と僕自身は捉えている。
また、これは、僕の強い意志そのものでもある。
1)ロプロプ
本格的にアルバム制作を始める前に既に出来ていたものを、改めてミックスし直した曲。
題の"ロプロプ"とは、シュルレアリスムの画家=マックス・エルンストが創作した半人半獣の怪鳥。
また二番目の歌詞に出てくる"頭のない怪人〜"の件は、バタイユの無頭人(アセファル)からのイメージ。
"プロとコントラ"のリーダーである福岡林嗣からの影響を自分の中で昇華させようとした詩である。
サウンドは、リンドラムの音を幾つか(粗く)サンプリング、ループ・キャプチャーでリアルタイム録音したもので80年代の影響を転用。
2)メビウスのダンス
これも早い時期に出来ていた曲で、既にライブでも色んなパターンで演奏しており、
前曲同様、細かい音の追加と再ミックスで仕上げた。
世界に対する見方や反抗や諦念の入り混じった抽象的な詩で、個人的には前向きなものとして捉えている内容。
詩と共に自然と浮かんだ音で、その頃に聴いていたジャズや古い歌謡曲の記憶が反映されてるんじゃないかと後に思った。
アルバムの軸で、ライブでも必ず演る自分の代表的な曲の一つ。
MVはコラージュ作家の岡本一生君による制作で、かなり良いものになっている。
3)ホログラム
ドラマーの故・本庄克己さんによるセッション音源からのドラムをサンプリングしてループさせたものを基本に作っていった曲。
自分の作風には今まであまりなかったタイプのダンスミュージックを目指して制作した。とても気に入っているし、アルバム中のハイライト的な曲だと思う。
詩に繰り返し登場する"ムシュフシュ"とは古代メソポタミアの図像、伝承に登場する霊獣。ラップに出てくる"マルドゥク"は、古代メソポタミア神話の特にバビロニア神話などに登場する男神で、マルンは武器の一つ。
それらはロシアの小説家ヴィクトル・ペレーヴィンの"ジェネレーションP"に出てくるのだが、たまたま読み返していたら、そのときに自分の考えていた事とリンクして、そのまま反映させた。
4)脱
子供の頃から聴いていたソウルミュージックを自分なりに換骨奪胎しようと試みた曲。幾つかの箇所で細かい引用を密かにしている。
具体的にこの頃に改めて聴いていたのは、Marvin GayeとかCurtis Mayfieldなど。
歌詞は現在の心境を反映していて、焦燥感のある内容に。
楽曲的には、また一つ新たな方向を掴みつつあって、これも個人的に気に入っている。
5)Q
数年前に作った曲からドラム/リズム以外を全部抜いて、新しく歌詞とメロディを作り直した曲。
二重の意味、含みのある内容。
あまりやった事ないコーラスの入れ方をしてみたり、楽しく作れたように思う。
6)ゴルジュ
これもかなり前に出来てた曲。少し音を加えてミックスし直した。
ライブでも何回か試みていて、自分の或る側面がよく出ているなと感じる。
1)や2),8)もそうだけど、ちょっと前に仕上げていた曲は幾つかのデータをまとめてしまっていて、ミックスが難しかった。
でも、そのおかげで変わったミックスの仕方を試せて、後半のピアノの音色とかは面白くなったんじゃないかと。
独特の雰囲になった曲。
7)RCP
ローファイというかチープ感のあるロックを勢いで作りたくて出来た曲。
ドラムはキック、スネア、ハットとパーツ別にサンプリングして、サンプラーでリアルタイムに最初から最後まで叩いたフィンガードラム。
歌詞はやはり現状の世界と人について。ちょうど、制作中に起きた変なニュース(謎の飛行物体が目撃されたニュース。その時に皆は何を感じ、その後は?)音声をラストに挿入した。
"今"をある意味で象徴するようなニュースだったんで。もちろん皮肉ですが。
ショートフィルムを作った時に、MVも撮った。
8)工作
アルバム中、唯一のラップ曲。音楽作りのルーツであるヒップホップに、プロとコントラの経験を反映させた曲。
自分の作ってきた曲の中でもかなり気に入ってるドラムの一つ。
序盤に出てくる声のコラージュはアントナン・アルトーの朗読から。
自分らしいアブストラクトなヒップホップ。
9)火影
4)と同じく、ソウルミュージックを自分なりに換骨奪胎しようと試みた曲。
The DelfonicsやThe Tempees(メンフィスソウルのコーラストリオ)を聴いていて、触発されて作ったけど、音作るうちにどんどん変わっていった曲。
詩は、この年に引っ越した新しい家で起きた幾つかの場面、雨の日に浮かんだ心象風景、生活。
楽曲として次の段階に進もうという意志のもと制作。現時点で一番気に入ってる曲かもしれない。
MVは詩の内容と絡めた、手作り感満載のモノ。
10)続・メビウスのダンス
一番最後に録音した曲で、演奏感が最も強い。
この時期に流れていた世間の空気 -都知事選とかコロナの経過とか諸々のニュース- が詩に反映している。
正解・不正解とか関係なく、自分で考えたコード進行で展開している。
メビウスのダンスでは、自分にとっては挑戦的だったヴォーカルを試みていて、その線でもう一度録ろうと考えた。
同時にこのアルバムの軸になっている曲の続編を最後に持ってくるのが良いかなと。
この時の自分の感覚・感情・思考が真っ直ぐに現れた詩。